さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜

「今日は、うちの両親と食事をして今後のことについて話をしていたんですよ」

——ちょ、ちょっと待って!

『今後のこと』どころか、あなたのお母様とめちゃくちゃ険悪なムードになりましたよね⁉︎

わたし、完全に嫌われましたよ⁉︎

あなたのお母様にとって「うちの嫁にしたくないNo.1」の座を未来永劫勝ち取りましたよ⁉︎


「あ、あのね、茂樹……」

わたしは慌てて弁明しようとした。

だが——


「……菅野先生だったら、申し分ないんじゃないか?」

茂樹はいつもと寸分違わぬ顔で、わたしに向かってあっさりと言った。

——えっ……?

「生まれ育った環境も似ているし、人生を共にするパートナーとしてお互い最適だと思いますよ」

今度は菅野先生の方を向いてそう告げた。

うちも菅野先生も弁護士事務所を営んでいる家であることを示唆していた。


そして、茂樹は手元の腕時計を見た。

念願だった副社長の専属秘書になった暁に、ボーナスを叩いて買ったIWCのポートフィノ・クロノグラフだ。
わたしも一緒に華丸百貨店へ買いに行ったから覚えている。

「申し訳ありません。
副社長(上司)を待たせておりますので、そろそろ失礼いたします」

茂樹はそう言うと、わたしたちに一礼して足早にフロアの奥へと歩き出し、あれやあれよという間に去って行った。

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