さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜

するとそのとき、幸生さんがデロンギで淹れたエスプレッソをわたしのいるリビングまで持ってきてくれた。

「はい、どうぞ」

「あ、すいません」

それから彼は母のいるダイニングテーブルに移り、乱雑に置かれた書類を避けつつエスプレッソを置いた。

「じゃあ、ミキちゃん。
僕はお風呂掃除がてら先に入ってくるね。
……光彩ちゃんはゆっくりしていってね。
今夜は泊まっていってもいいんだからね」

そう言い残して、幸生さんはバスルームへと去って行った。


(すこぶ)る仕事はできるが、家事はからっきしの我が母親が生きていられるのは、彼のおかげだ。

幼い頃食卓にのぼった母が揚げた「コロッケ」は、こんがりキツネ色には程遠くほぼ白いままだった。
にもかかわらず、ところどころ真っ黒に焦げていた。
しかも、衣が爆発して中の具がはみ出ていた。

おそらく油の温度がまだ上がりきってないのに次々と冷凍コロッケを投入した結果であろう。

そして、まるで「パンダ」みたいな色模様のコロッケを口に入れて噛んでみると、じゅわーっと滲み出てきたのはじゃがいもや挽肉の旨味ではなく油の味だった。


「ねぇ、光彩……
だれから聞いたかは知らないけれど……」

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