さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「……そんなもの仕事なんだから、あたりまえだろう。甘ったれるな」
——はあぁ?
「来週の月曜日の会議は、うちの副社長も同席するんだぞ。
おまえ、コンプラ・マニュアルのリニューアル案のプレゼン、万全なんだろうな?」
茂樹から、ぎろり、と睨まれる。
「だから、今日休出して必死で間に合わせたんじゃん!」
——昔語りして、同情しながら感傷に浸ってたわたしが大バカだったわ。
「まぁまぁ、せっかくの土曜の夜なんですから、仕事のお話は無粋ですよ」
金髪で左耳にダイヤのピアスを輝かせた、二十歳そこそこの若いバーテンダーが、宥めるように言った。
「光彩さん、お疲れでしょう?
どうぞ、そちらにお掛けになってください。
……いつものでよろしいですか?」
穏やかに微笑みながら、おしぼりを差し出してくれる。
——翔くんはまだ大学生なのに……
茂樹なんかより、よっぽどオトナだわ。
「ええ、お願い」
おしぼりを受け取ったわたしは、茂樹の隣に腰を下ろした。
相変わらず、座る者をやさしく包み込むようなアームソファだ。
「かしこまりました」