さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「翔、こいつを甘やかすな」
——な、なんですって⁉︎
「それに……なんだ、その髪の色は?
バイトばかりしてると聞いたが、ちゃんと大学へは行ってるのか?留年は許さないぞ」
まるで高校のときの「担任」のような口調で、茂樹は翔くんまでをも、じろりと睨んだ。
「茂樹さんも、諒志さんと同じこと言いますね」
翔くんは、ははは…と力なく笑った。
「ちょっと……理由があって金髪にしてみただけっすよ。大学にはちゃんと行ってます。それに、今はもう春休みっすから。
……でないと、じいちゃんの店を継がせてもらえないんで」
翔くんが肩を竦めた。
KO大生の彼は、実は大手ファミレスチェーンの「御曹司」なのだが、「伝説のバーテンダー」と呼ばれる杉山さんに幼い頃から憧れていて、その跡を継ぎたいと考えている。
「ふん、そんなイカれた金髪をしているヤツを、
……わかばに近づけるわけにはいかないな」
茂樹の妹のわかばちゃんは、管理栄養士になるための女子大に進学しているが、高校生の頃から家計を助けるために、翔くんのおうちのファミレスでバイトしていた。
二人は同じ学年だった。
「えええぇーーーっ⁉︎」
それまでやけに大人びた顔で済ましていた翔くんが、とたんに素っ頓狂な声をあげた。