さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
もう、三〇歳を越えたのだ。
忙しくてすっかりLINEすらご無沙汰しちゃってるけど、学生時代の友人たちも次々と「片付いて」いってるに違いない。
——礼子は大丈夫だよね?
大学時代にテニスサークル仲間だった久城 礼子を思い出す。
——でも……ああいう芸能人みたいな仕事をしていたら、それこそ「電撃婚」とかありそうだな。
彼女は新進気鋭のジュエリーブランド「Jubilee」で専属ジュエリーデザイナーをする傍ら、自ら「アイコン」となって広告塔のようなこともやっていた。
——それに、美大の中でも女◯美卒だから、なんだかお嬢様っぽくて、その気になれば引く手数多なんじゃないの?
そのとき、不意に女子校時代の同級生の顔が浮かんだ。
頗る頭が良い上に先生方の信頼も篤く、下級生たちからも人気があったため、生徒会長をやっていた才媛だ。
——彼女……水野 七瀬は、確かT大法学部に現役で入学して、卒業後はたぶん財務省とかに入省して、キャリア官僚になったんじゃなかったかな?
部活もクラスも違ったから、特に仲が良かったというわけではないが、なんとなく……
彼女だったら結婚の「け」の字も出ることなく、バリキャリ道をひたすら邁進しているような気がする。
——そうだわ!
彼女を勝手に「心の支え」にして、これからの独身生活に耐えていこう……
——うん、そうしよう。