さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「……お隣の上條さん、まだ大阪にいらっしゃるの?確か、単身赴任されてたよね?」
隣家を見遣りながら、わたしは冬美さんに尋ねた。
上條家のご主人は、わたしにとっては「お隣のおじさま」だが、めちゃくちゃダンディなイケオジなのだ。
——実は、ここだけの話……
幼稚園児だったわたしの「初恋相手」なんだけどね!
「ええ、でも今は奥さまもご主人を追って一緒に大阪にいらっしゃるのよ」
「へぇ、そうなんだ」
奥さまの方はわたしにとっては「お隣のおばさま」だが、めちゃくちゃ愛らしい女性なのだ。
しかも「おばさま」なんて呼ぶのは憚られるほどの「美魔女」である。
——つまり「超お似合いのご夫婦」ってことで、わたしの「初恋」はあえなく玉砕したけどね……
「じゃあ、大地があの広いおうちで一人暮らししてるんだ」
上條夫妻には一人息子がいて、W大を卒業後に父親と同じ(株)あさひ証券へ就職したと聞いている。
「いいえ、大地くんは激務のために実家を出て会社の近くでマンション暮らしだそうよ。
ついこの間、同じ会社の方と結婚されてね、披露宴にはおとうさんとわたしもお招ばれされたんだけど、すっごく盛大だったわ」
「えええっ、うそっ!
……あの悪ガキだった大地が結婚っ⁉︎」
大地はわたしよりも一学年下だし、中学からは彼が御三家、わたしは女子御三家の私立校に進学したため疎遠になったが……
それでも、ヤツのことは一回り下の実の弟よりもうんと昔から見知ってるのだ。
——はぁ……
時の過ぎるのはなんて早いんだろう……