さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜

——いい歳をして、叱られてしまった……

わたしは玄関の三和土(たたき)でパンプスを脱ぎ、すごすごと床に上がった。


「光彩、私の書斎に来てくれ。
……冬美、お茶を差し替えてくれないか?」

——あら、リビングじゃないんだ。
おとうさんの書斎で話をするなんて、めずらしいな。

「はい、すぐにお持ちしますね」

冬美さんはそう応じると、リビングの奥にあるダイニングキッチンへと向かった。

「じゃ、おれ、課題があるから」

至公はぶっきらぼうにそう言うと、二階にある自分の部屋へ向かうべく足早に階段を上がっていく。

彼は今、隣家の大地が通っていた「御三家」の一角である中高一貫の名門男子校に通っていた。
ちなみに父の母校でもある。

——あぁ、こんなふうに「大人の階段」を上っていくのね……


そして、わたしは父の後ろについて、一階の奥にある書斎へと向かった。

「……待たせてしまって申し訳ない」

書斎のドアを開けながら、中に向かって父が詫びた。

——えっ……だれかいるの?

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