さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
なんだか、突然寡黙になった翔くんが、コースターの上にビアグラスを置く。
いつものグランドキリン ホワイトエールだ。
早速、ビアグラスを手に取って呑む。
大麦ではなく小麦麦芽特有のやわらかな味わいと、白ワインを彷彿とさせる希少ホップ・ネルソンソーヴィンの香りが、口の中いっぱいに広がる。
「くぅーーっ、美味いいぃっ!」
ビールなのに『白ワインを彷彿とさせる』なんて邪道だよ、って言う勿れ。
自分が美味しいと思うものを、めいっぱい堪能してなにが悪い。
「……おまえは、相変わらず下品な呑み方だな」
カウンターに頬杖ついた茂樹が、心底軽蔑しきった声でわたしに言う。
「もうちょっと……育ち良く呑めないのか?」
——はあぁ⁉︎
「ビールを『育ち良く呑め』るなんて、どんなお嬢様よ?」
思わずそう言うと、茂樹はがくっと頭を落としてうなだれ、めずらしく盛大にため息を漏らした。
「ちょ、ちょっと……どうしたのよ?」
カウンターの上に目を落とすと、あまりお酒に強くない彼にしては結構呑んでいるみたいだった。
「確かに……すんげぇ『お嬢様』だもんな……」
——えっ、それって……
わたしはカウンターの向こうの翔くんを見た。
翔くんは困ったように苦笑した。