さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「……君たち二人がそのようにしたいのならば、私がとやかく言うことではないだろう」
冬美さんが辞去したあと、ようやく父は告げた。
「すっかり自立した娘をいつまでも手許に置いておきたいと思うような、理不尽な親にはなりたくないからな」
——よく言うわ!
内線で掛けてきたときの声は不機嫌極まるものだったくせに。
「では……光彩さんとのこと、お許しいただけるんですね?」
——いやいやいや、だから、ちょっと待ってってばっ!
「ありがとうございます!」
菅野先生は弾んだ声で立ち上がると、父に向かってがばっと頭を下げた。
——菅野先生……?
若輩者だと顧客から足元を見られないよう、太々しいまでに冷静沈着な普段の様子からは、あり得ない光景だった。
「光彩さんは、勤務する事務所の所長であり、そして弁護士としても目標である進藤先生の大切なお嬢さんです。
なので、光彩さんへはまず先生のお許しを得てから、僕の本当の気持ちを伝えたいと思っていました」
——『本当の気持ち』って……?