さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
すると、そのとき——
軽やかなLINEの着信音が聞こえてきた。
iPhoneのデフォルト設定である「木琴」の音だ。
——だれのスマホが鳴っているんだろ?
父がデスクの上のiPhoneを見た。
「私ではないな」
菅野先生がスーツの内ポケットを探ってiPhoneを取り出す。
「僕でもありません」
わたしはル・プリアージュに手を突っ込んで、中からiPhoneを引っ張り出した。
「わたしも違うわよ」
しかし、着信音はまだ鳴り響いている。
しかも——わたしのバッグの中から聞こえる。
「もしかして……」
わたしはもう一度、バッグの中に手を突っ込んだ。
すぐさま、もう一つのiPhoneを引っ張り出す。「会社支給」ではなくプラベ仕様の方だ。
「あっ……」
着信音の出所は、そのプラベ用のiPhoneだった。
そして——
そのディスプレイには……
【島村 茂樹】
と、出ていた。