さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「先週の土曜日、祖父を先に帰しておれももう店を閉めて帰ろうと思ったそのとき、すでにぐでんぐでんに酔っ払った茂樹さんが入ってきたんですよ」
自然と翔くんの視線が入り口のドアへと向かう。
——えっ?
この店に来る前に、すでに酔っ払ってたの?
先週の土曜日ということは……
菅野先生とのデートのはずが、ご両親もいらしての「食事会」となってしまったあの日だ。
つまり……会食後、菅野先生と二人でいるところで、会社の接待で来ていた茂樹と出会してしまった日でもある。
「結局、その日は明け方まで呑み続けて、酔っ払った茂樹さんの愚痴に付き合わされましたよ」
「ええっ、ぐでんぐでん状態で来たのに、またここで呑んだのっ?」
「店を閉めて追い出したそのあとに、どこか得体の知れない店に呑みに行かれでもして、トラブルに巻き込まれでもしたら大変ですからね」
そう言って、翔くんは肩を竦めた。
「でもね——その日だけじゃないんですよ」