さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「……光彩……」
茂樹がソファから、ふらりと立ち上がった。
そして、ローテーブルを挟んだこちら側にやってこようとする。
だが、昨夜からこの店で呑んだくれているのだ。
その足取りは、よろよろと危なっかしい。
「ちょ、ちょっと……千鳥足じゃんっ!」
案の定、わたしのいるソファに辿り着くなり倒れ込んできた。
当然、一八〇センチ近い図体の茂樹を支えられるはずもなく——わたしはソファに沈んだ。
のしかかられた茂樹の身体から、力がすーっと抜けていく。
「うわっ……重いってっ!」
じたばたと踠くわたしには、いっさい構うことはなかった。
——もおっ、なんなのよっ⁉︎
「……勘違いするな、自意識過剰女」
わたしの耳元で、茂樹が囁いた。
「おれがおまえを『完全には』手放したくないからと言って、『ストーカー』なわけがないだろうが」