さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜

——な、な、なんですってぇっ⁉︎

カッとなったわたしは思わず、自分の首元に沈められていた茂樹の顔を、ぐいっと持ち上げた。

——ヤツの首が、グギッと鳴った気がするけど知るもんか。


茂樹と至近距離で目が合う。

文字どおり浴びるほど呑んでいる彼の目は、さすがに白目の部分が充血していたが……

そこに「酔い」は、もう見られなかった。


「おまえの気持ちを聞いた今でも……」

そう告げながら、茂樹は両方の手のひらでわたしの頬をすっぽりと包み込んだ。

「今のおれにとっては、やはり最優先すべきは母とわかば()だ。
そして、次に優先するべきは大恩ある富多家——将吾さまだ。公私共に支えるべきお方だ。
だから、おれが彼らよりおまえの方を優先することは、万に一つもない。
少なくとも……わかばが大学を卒業して独り立ちするまでは、それが変わることはない」

そんな残酷な言葉とは裏腹に、少し節くれだった彼の親指が、わたしのやわらかな頬をゆっくりとやさしく撫でる。


「それでも——

おまえは、おれを待てると言うのか?」

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