さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「それこそ——何十年後になるかわからないぞ」
「だから、『わたしが継いだあとの事務所』って言ってんじゃんよ」
——頭が良いくせに物分かりの悪い人だわ。
今に始まったことじゃないけど……
「わたしだって、まずは今のおとうさんの事務所で『修行』を積まなきゃなんないし、それから至公が弁護士になったらなったで、一人前になるまでは見捨てるわけにはいかないから助けなきゃなんないしね」
「そうか……」
茂樹は噛み締めるように呟いた。
「確かに……『おまえの事務所』だったら、
おれの本当にやりたかったことができるかもしれないな……」
——あれ?
いつもどことなく「諦念」した醒めた目をしているのに……
いつの間にか、その切れ長の目には静かな輝きが宿っていた。
長い付き合いにもかかわらず、わたしが今まで一度も目にしたことのない……
彼の「精気」がそこにあった。