さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「あっ、すみません、申し遅れました。
水野 七海と申します。島村室長にはいつもお世話になっております」
彼女が果敢にも田中くんを振り切って、ぺこり、と頭を下げて自己紹介した。
田中くんが「信じられない…」という顔で絶句している。
——確かに、茂樹の言うとおり『諒志のおもしろいもんを見』させてもらってるわ。
「あ、こちらこそ……進藤 光彩です。
わたしは進藤綜合法律事務所で……」
「存じています。弊社の法務部を担当されている弁護士の先生ですよね。
法務部には同期の白石がいて、先生のことはよく伺いますので」
「あら、そうなんだ」
白石さんは、事務処理能力が高いだけじゃなく、サバサバしていて仕事を頼みやすい子だ。
「それで、相手はどなたかは知りませんが、島村室長が『失恋したて』らしいんですよ。
実は今、うちの秘書室では室長以外はみんなラブラブで、しあわせモード全開なので……」
——イヤだ、なにそれ?
「独り身」にとっては、絶対にそんな部署で働きたくない。
いや、それとも……おこぼれで「御利益」があるかも?