さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜

「最近の秘書室はなかなか居心地良さそうなのに、今さら『異動』は嫌ですよね?」

茂樹が「仕事モード」の口調になっていた。

「へっ?」

水野さんが真ん丸の大きな瞳を、さらに見開く。

「立ち上がったばかりの副社長肝煎りのプロジェクトでは、どうやら人手が足りなくて困っているようなんですが……どうしますか?」

「どえええぇーっ⁉︎」

——えらくダイナミックに驚くわねぇ。

「いやいやいや、島村室長、このままあたしを秘書室に置いてくださいっ!
ついこの間、本社に舞い戻ってきたしつこい元カレを振り切ったばかりなのに……っ!
もし、アイツなんかと同じ部署に配属されたりでもしたら……」

そのとき、バカラのグラスを磨いていた翔くんの顔が、大きく歪んだ。


「……ななみん、いったいどういうことだ?」

田中くんの背後には、どこから呼んできたのか、真っ黒な暗闇が立ち込めていた。

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