さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
それにしても……
——今夜の茂樹は、しつこかったなぁ。
暗闇では確認のしようがないけれど、なんだか全身に鬱血痕ができたような気がする。
お堅い職業柄、首元とか目立つところにないといいのだが。
そもそも、学生時代に出逢って、今年三十一歳になる今まで……
コイツから『おれを慰めてくれ』なんて言葉、初めて聞いたんですけれども。
——『最近、失恋したらしい』そうだから、わたしのカラダで鬱憤でも晴らしたのかなぁ。
そういえば……彼に抱かれるのは「ひさしぶり」だった。
振り返れば、ここ二、三ヶ月ほど「レス」だったように思う。
もう「カレカノ」ってわけではないのだから、ある意味「健全」な関係だったわけだけど……
てっきり、秘書室長と(実質の)法務部長との兼任で、今まで以上に忙しくなったからだとばかり思っていた。
だけど、もしかしたら「好きな女」に「操を立てていた」のかもしれないな。
感情の起伏をほとんど見せない彼にしては、店ではずいぶんと「荒れて」いた。
あんなふうになるまでお酒を呑むなんて……
——その女のこと、
本当に好きだったんだ……