さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜

月曜日の朝、わたしは自宅マンションからは有栖川宮公園を挟んで向かい側にあるベリーヒルズビレッジの職場へ、いつものように歩いて出勤した。

デスクワークが主であるため、どうしても運動不足になりがちなので、せめてもの「ウォーキング」だ。

ベリーヒルズビレッジは、うちの法律事務所が入居するオフィスビルだけではなく、ショッピングモールやレジデンス、なんと総合病院までも備えた「複合タウン」である。

(本当は、ここのレジデンスを買って住みたかったのだが、めちゃくちゃ高額な上に我が国の政財界に君臨する面々(ジジイたち)が管理組合を牛耳っていて、今時「既婚者」でないと認めないっていう人権無視のフザけた裏規約があるため、泣く泣く断念した)


四月初旬のこの時期は、道中いたるところで見頃になっている桜並木を通って、オフィスビルへと向かう。

信号待ちのとき、ふとわたしは満開に咲き誇る桜の木を見上げた。

そのとき一陣の風が吹いて、はらはらはら…と桜の花びらが舞い落ちてきた。


——そういえば、春って……

出会いと別れの季節、っていうよね。

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