さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
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事務所(オフィス)に入ったわたしは、法務事務職員(パラリーガル)たちが業務をする「大部屋」の片隅に置かれた自販機(ユニマット)でコーヒーを買ったあと、個室として自身に与えられているブースに籠った。

そして早速、午後からのTOMITAホールディングスでのプレゼンに向けて最終チェックを始める。


間もなく、コンコンコン…とノックの音がした。

——きっと、パラリーガルの向井だろう。

「はーい、どうぞ」

MacBook Air(ノートP C)から目を離さずに返事をする。


すぐに、カチャリ、とドアを開ける音がした。

「おはようございます。
今日から、こちらでお世話になる千葉(ちば) 佑亮(ゆうすけ)です。
受付の方で、先生のところへ行くように言われたのですが……」

わたしは声の方に顔を向けた。

そこには、ダークグレーのスリーピース姿の青年が立っていた。

とたんに、思い出した。

——あぁ、そうだった!
今日から「新人」君(ニューカマー)が来るんだったな。


「あっ、おはようございます。
……失礼しました、千葉先生。
弁護士の進藤 光彩(ありさ)と申します」

わたしは、あわててデスクチェアから立ち上がった。

「いえ、こちらこそ、お仕事中に申し訳ありません。それと……」

端正な顔立ちの彼が微笑む。
スクエアの眼鏡がよく似合っていた。

「僕はこの国の弁護士ではないので、どうぞお気遣いなく」

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