さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜

彼は、父親の転勤によって十代の初めからアメリカに渡り、イェール大学法科大学院(Y L S)を修了後にNY州弁護士の資格を得て、NYの有名なビジネス専門の法律事務所(ローファーム)に勤務していたという。

その働きぶりをうちの父が聞きつけて、わざわざNYまで出向き、『これからの日本企業のために尽力してほしい』と必死で口説き落としたのだ。

まだ三十歳になったばかりだそうで、わたしよりも歳下だが、相当優秀な人であることには間違いない。(ハイスクールや大学では飛び級(スキップ)しているらしい)


それに、今回のことは彼の将来にとっても悪くない話なのだ。

我が国の法曹界は、すでにバブル期の辺りから危機感を抱いていたのであろう。(主にアメリカからの「うちの国の弁護士を認めず活動させないとはけしからん」という「突き上げ」もあったらしいのだが)
手をこまねいているはずもなく、一九八〇年代後半に国会が特措法を制定して「外国法事務弁護士」の制度が設けられた。

なので「外国法事務弁護士」であれば、裁判で弁護することは認められていないが、渉外的な法務事務に関する案件に関しては、日本の弁護士と一緒に活動することができるのだ。

ただ、日弁連を通して法務大臣の許可を受けねばならず、実務経験も三年以上と定められている。


この度、彼は国内では「五大法律事務所」の一角をなすうちの事務所に召し抱えられることとなった。あとは実務経験さえクリアすればいい。

彼の「外国法事務弁護士」への道は、拓けたも同然だ。

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