さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
彼は我が国の弁護士資格は持っていない。
アメリカのNY州の弁護士資格を所有する、いわゆる「米国弁護士」である。
アメリカでは、州ごとに弁護士資格を取得する制度となっており、原則として州外での権限の行使は認められていない。
日本でも、この国の司法試験を突破していない限り、弁護士としての活動はできない。
もししてしまうと「非弁活動」となり、弁護士法第七二条違反により処罰の対象となる。
では、そのような彼がどうして我が進藤綜合法律事務所に招かれたのかというと——
民事専門で経済関係に強いうちの事務所では、その顧客のほとんどが東証一部上場の法人だ。
(ちなみに、なぜ企業や会社組織を「法人」と呼ぶかというと、諸説はあるが、古代に制定された「人頭税」に起因し、為政者が「人と同じように組織からも税を徴収するため」に「法律上の人」として規定したゆえと言われている。
もちろん現代では「人と同じように」義務だけでなく権利の方も認められているが)
昨今の国境を越えた国際化の波で、そういった大企業では海外法人との契約が激増していた。
海外法人と結ぶ契約の場合、双方の国の法律に精通しておかないと、いつ足元を掬われるかわからない。
そのため、海外との取引が多い法人を顧客とする法律事務所では、「御意見番」として日本の弁護士資格を持たなくても海外の弁護士資格を持つ優秀な人材を確保することが必要とされるようになってきた。