さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
『バカかっ、オレオレ詐欺じゃないっ!
おまえはおれの声もわからないのかっ⁉︎』
——はぁ?
「名乗りもしないのに、わかるわけないでしょう⁉︎ あんたこそ、バカなの⁉︎」
と、わたしは言ってやった。
『うるさいっ、おまえの声は耳につくんだ。いいか、よく聞け』
——何なの、その態度っ、超ムカつくんだけどっ!
「なによっ、エラそうにっ!
いきなりこっちの都合も構わずかけてきて、あんた何様のつもりっ⁉︎」
『だから、ギャンギャン騒いでないで、おれの話を聞けって言ってるんだっ!
本来ならば恭介に言ってるところを、特別におまえに教えてやってるんだ!』
——だったら、ロンドンにいる松波くんにSkypeすればいいじゃんっ!
「もおっ!……いったい何なのよっ⁉︎
勿体つけてないで早く言いなさいよっ!」
——ほんとは今すぐにでも言いたくて、うずうずしてるくせにっ!
『だから、杉山さんのバーにすぐに来いって!
……今、諒志のおもしろいもんが見られるぞ』
——一滴の血も通ってなさそうな、あの人造人間の 田中くんに、どんな『おもしろいもん』が見せられるっていうのよっ⁉︎