さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「どうせ、法務部にいる同期の白石さんからグチられた水野さんが、秘書室で朝比奈さんと大橋さんに話して、それを朝比奈さんが将吾さまにチクったんでしょう?」
茂樹がじろり、と副社長と朝比奈さんを見た。
——へぇ……「主君」の二人に、茂樹はこんなふうな態度も取れるんだ。
副社長とはビジネスモードのときしか会っていなかったため、茂樹はプラベでも同じように慇懃な感じで接しているとばかり思っていたから、意外だった。
っていうか……
朝比奈さんがこの会議室に入ってきたとたん、ガラリと雰囲気が変わったような……
緊迫していた空気がふっと緩んだ、というか……
この場がほわっと和んで、すっかりビジネスモードからプラベモードになったのだ。
緊張していたのは、なにもわたしだけではなかった、ということなのだろう。
——なぁんだ、副社長にとっては、朝比奈さんとは「しあわせな業務提携」の政略結婚じゃなくて「ガチ」ってことじゃん。
だとすると……
——あぁ、そうか……
そのとき、わたしはまるで「天啓」にうたれたかのように理解した。