さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
立ち上がっていたわたしは、腰が砕けたように力が入らなくなって、すとん、とまたデスクチェアに座った。
——あら、イヤだ。幻聴かなぁ。
ヤバい、ヤバい、働きすぎだわ。
「あの……もう一度、おっしゃってくれませんか?」
「何度でも言うよ」
ソファに深く座り直し、長い脚をふわりと組んだ菅野先生が、にやりと笑う。
「お試しで、おれたち一度付き合……」
「いやいやいや、いいですっ、わかりましたっ!」
わたしはあわてて遮った。
——げっ、幻聴じゃなかったんだ……
「じゃあ……光彩先生としてはどうする?」
魅惑的な切れ長の目で、じーっと見つめられる。
彼に憧れる法務事務職員の女の子たちだったら、きっと真っ赤になっちゃって頭の中お花畑満開になることだろう。
「えーっと、菅野先生……
……なにが『目的』なんですか?」