さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
「『目的』って……ひどいなぁ」
菅野先生がとたんに情けない顔になる。
彼に憧れる法務事務職員の女の子たちだったら、この「ギャップ萌え」に真っ赤になっちゃって、きっと頭の……以下同文。
——そんな顔したって、わたしは騙されないわよっ。
「菅野先生とはかれこれ十年近くなりますが、今までこんな色っぽい話になったこと、まったくなかったじゃないですか」
そうなのだ。
確かに今は「同僚」だけど、やっぱりわたしには出会った頃の「教育係」の印象が拭えないし、向こうだってそうだろう。
「それに、ほんとにわたしと付き合いたいんだったら、『お試し』だとか『交換条件』だとか、そんな回りくどい言い方せずに、ちゃんとストレートに告白しません?」
——告白り方一つとっても、違和感バリバリなんだけどっ。
そのとき、ふと思いついた。
「もしかして……ご実家からなにか言われているんですか?」
——「お気楽な次男坊」ということでうちの事務所にやってきたはいいけれど、そろそろそうも言っていられなくなったとか?
彼はわたしの二歳上だから、今年三十三歳になる。