他校生
私は唇の色が薄い。

顔色が悪く見えるせいで、色付きのリップはいつも持ってる。

今さら何とか出来るのは、このくらいのもので…


風紀検査はあるものの

うっすら化粧してる子も、髪を明るくしてる子もいる。


学校出たら、着崩したり…




って、そんなことより!

動揺してしまう。本当にあの人が……


バスケ部だったらどうしよう!


物凄い緊張してきたころ、K高のバスケ部より早く到着した紗香も


目に見えて


“物凄い緊張してる”のが分かった。


「どんだけ、チャリ漕ぐの早いのよ!」
肩で息してる紗香にそう言った。


「あ、朱里、リップ貸して」

それを聞いて紗香も、全然だな。と、思ってリップを手渡した。


それから、紗香の乱れた髪を整えるのを手伝った。



だけど、紗香のこの一連の努力…
全く無駄なんじゃないかと思う。


なぜなら、再び髪を乱して顔を隠し…ただけじゃなく

体育館2階のギャラリーでも、当然ながらフロアの片隅でもなく


下の小窓…鉄格子の間から見てる。


全体が見渡せない故に、そこから引いて見たりして、それはもう…


花壇とか、手洗い場とか呼ばれるところだ。


「ねぇ、ギャラリー行こうよ」

「この前、見てたのバレたでしょう?好きだって、バレちゃうじゃん」


「このままだと、“変な奴”しか残らないよ?」


せっかく顔は可愛いって言って貰えてるというのに。



「あ、そうだ…紗香…」


それから私は、昨日、月刊バスケットボールを購入した経緯を説明した。


「え!?マジ!バスケにいたら熱いね!一緒に応援出来る!」

紗香が大きな声で言ったもので

慌てて止めた。

「ちょっと!ここ、無駄に近いんだから、聞こえるよ!」

「ご、ごめん!」

「あと、もうひとつ。むっちゃんも見に来てると思う。今週から、むっちゃんクラスで浮いてるみたいで…お弁当、一緒に食べてるんだ」


「そっか…むっちゃんは……2階で見てるのかな?」

紗香がボソッと言った。

「ここから見えないってことは…2階かな。一人でも見に来るって言ってた」


私がそう言うと、紗香は黙ってしまった。



「…好きなんだろうね、むっちゃん。その…ちぃこと喧嘩してまで、さぁ。クラスから浮いても、引けないくらい、好きなんだよ」


「本当、そうだね。だけど、誰かさんだって、他校に忍び込むほど、好きなんでしょう?」

私の言葉に


体育館を見たまま


「好き」

紗香がそう言った。





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