他校生
「髪伸びたね」

「うん、伸ばしてるの。快晴くんは最近短いよね」

「あー、うっとおしいからなぁ」

「出会った時は長かった」

「ああ、あの時は切る前だったから……」

「ふぅん」


長めもカッコ良かったけどな


「直ぐ切るつもりだったんだけど、朱里に出会ったからな」


「ふぅん?私、別に長いの好きじゃないよ、どっちでも……」


「髪って切ったら雰囲気変わるじゃん?誰か分かんなくなったら困るなって、切れなかった」



「……髪の毛切っても……覚えてたと思うよ」


「マジ?」


だって、カッコいいんだもん。
とは言えなかったけど……


「うん」


自転車を停めて、目的も無くブラブラと散歩する。



この緊張にも、ほんの少し慣れて……

お互いの好きなものとか、考え方とか

前より知って、前より好きになった。



少し前を歩く彼の手に

自分の手を添えて見上げた。



びっくりしたように、私にの顔をみた快晴くんが

私の手を握り返し



「朱里から、手繋いでくんの、初めてだな」

そう言って笑った。



街を歩くと

色んな制服とすれ違う。



男子校と女子高なら他高同士のカップルも珍しくないのかもしれないけれど……


どちらも共学の私達は

時々、K高の友達に会って快晴くんが話すのを少し離れて待ってる。


私の知らない男子と、私の知らない女子と
快晴くんは話す。


それに少し……寂しさは感じるけど


“彼女”って紹介してくれることに


恥ずかしくも嬉しい。





その逆もあって……

N高の誰かと出会った時は


快晴くんはにこにこと、隣で待っててくれる。




それが、嬉しくも恥ずかしい。



「あ、俺まだハンカチ持ったままだわ」

「本当だよ、返してね」



「返したら、繋がりが無くなる気がして……」

「えぇ!?」

「ダッサ」

「大丈夫!でないと、私も困る」


「はは!だよな、困る!」

「返してね、宝物だから」

「……これから、もっと……増える!」

「月バスも」

「月バス?何で?」

「快晴くんが触ったからっ!」


これは……ちょっと、気持ち悪いかもしれない。



言ってから思った。


「俺、今……これ触ってっけどね」

快晴くんが繋いだ右手を上げた。



「はっ!じゃあ、私の右手も宝物だ!」

「え?右手かよ!はは!あはは!」



「じゃあ、俺の左手も宝物か?朱里専用」

「サウスポーのくせに」

「俺、両利き。サウスポーを親に矯正されたもんで。でもバスケする時、地味に得。」

「私専用じゃないじゃない!」




「あ……まぁ、そのうち……他んとこもいっぱい触るから大丈夫」


カッと赤くなった私に


「あれ?……朱里ちゃんのえっち」


そう言った快晴くんの手を振り払って、グーパンチした。


すぐにまた、繋いだけれど。
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