この男、危険人物につき取扱注意!
「仕方ありませんね!
で、このマグカップがどうかしましたか?」
(私が、ソーサー付きで出されるのは分かるけど…
昨日はチーフも同じソーサー付きのカップだった。 それって若頭だから?
組長さんの時も、同じなのかな?)
「マグカップって…それぞれ決まったのが有るの?」
「え?あ、はい。組にお世話になる事になった時、亡くなった姐さんが、茶碗と湯呑みそれからマグカップを買って来てくれたんです。“これからは家族だから”って!
多分、他の兄貴達も同じだったと思います。
組長はあまりコーヒーとか飲まないからあまりつかいませんが、亡くなった姐さんと揃いのモノがありますよ?」
(そうなんだ…
チーフのお母さんって本当優しい人だったんだ…)
「チ…若頭のは無いの?」
「いえ…若頭が組を出る時、“捨てていい”って言われたんですけど、亡くなった姐さんが用意したもんだし…どうしても捨てられなくて、裏の蔵に入れたままになってます」
(蔵に…)
「でも、それが何か?」
「あ、ううん。
…でも、二人と仲良くなれて良かった!
今朝は組長さんに怒られたし、皆んなにも嫌われてるかなって思ってたから…」
「誰も嫌ってなんかないスッ!
ただ、色々あったから…
他の兄貴達も、戸惑ってるだけだと思います…
でも、ホント良かったです!」と真司が話した。
「え、なにが?」
「若頭が結婚してくれて!」と嬉しそうに話す真司を、直ぐ様達也が真司の後頭部を叩いて叱責した。
「良いじゃ無いですか?
こうして千夏さんと結婚したんだし!
噂は間違ってたって事でしょ?」
「噂…?」
春樹には、極道の間でゲイだと噂があったと真司が話した。
「そんな噂が…?」と聞く千夏に、達也はその話はしたくないとばかり、口を一文字に結んでいた。
(達也さん、なにか見たのかな…
もしかして坂下さんとの…私が見た様な事…?)
「あれだけの良い男なのに全く女っけはないし、叔父貴達も縁談話を持ってきても、話すら聞かないって言ってましたし、あの藪先生も組長の往診に来る度、“一度で良いから”って若頭に迫ってるところ、兄貴達も何度も見たとかで…兄貴達の中にも疑っていた者も居たくらいで…
達兄も見たんですよね?」と真司は達也に同意を求めた。
「…その藪先生って、ホントにゲイなの?」と千夏は二人に聞いた。
「…噂です。この業界結構いるみたいですから…」
(うっそ…マジで…
じゃ、やっぱり…チーフと坂下さんも…)
「でも、これで疑いも晴れましたし、俺達もスッキリしました!」
「そ、そうよ!
若頭がゲイな訳ないじゃない!
私という女がいるんだからね⁉︎」と千夏は笑った。
二人にそう言いながらも、千夏自身は自分がカモフラージュに使われていると確信をもった。