この男、危険人物につき取扱注意!
「あ、そうだ。
若、ベッドを手配した方が良いかと?」
「ベッド…誰の?…親父のか?」
「いえ、千夏さんのです。
千夏さん、ご自宅ではベッドを使っておられるらしく、昨夜は慣れない布団でなかなか寝れない様でした」
「ん⁉︎ なんでお前がそんな事知ってる⁉︎」
(いつそんな話してた…?
俺は聞いてないぞ⁉︎)
春樹が盗聴始めたのは今朝起きてからで、昨夜は珍しく早々と寝落ちしてしまった春樹は、昨夜の千夏達二人の会話は勿論知らない。
自分の知らないところで、何が起きていたのか分からない春樹は、再び坂下に疑いの眼差しを向けた。
「昨夜…うさぎとなんかあったのか?
おまえやっぱり…」
あまりの疑い深さに坂下は思わず深いため息をついた。
「はぁ…若、あまり嫉妬深いと嫌われますよ?
違います。寝苦しいだのなんだのって煩くて…
仕方なく麦茶を持っていった時に、そんな事を言ってたものですから?
若、昨夜は珍しく早くお休みになっておられましたから…」
(ああそう言えば、昨夜は久しぶりに若い奴等と飲んだのと、側にうさぎが居ると思ったら安心したんだよなぁ…
まさか寝落ちするとは俺も思わなかった。
ん?まてよ…
こいつ今…)
「煩い…?
え…お前もしかして…」
盗聴していた事を春樹に勘づかれたと察した坂下の視線は泳ぎ、落ち着きをなくしていた。
「あ…いえ、まだ若が若い頃に…付けたモノが…その…そのままになってまして…」
「お前、俺を監視してたのか⁉︎」
「あ…いえ…昔、若の素行の悪さを姐さんが…心配されてましたから…」
中学生の頃の春樹は、傷だらけで遅く帰ってくる事が多かった。
心配した母の百合子が話を聞こうとしても、“煩い”の一点張りで、百合子を跳ね除けていた。
父の太蔵は百合子に“放っておけ”と言うだけだった。
その為、百合子の心情を察した坂下が、当時付けた盗聴器がそのままになっていたと坂下は話した。
(クッソ!っ盗聴なんかしやがって‼︎
まぁ、家中に盗聴器付けてる俺がこいつの事を言えたもんじゃないが、うさぎと事に及ぶ前に撤去しないとヤバイな…
事に及ぶ前にって…ホントに出来るのか…?
千夏が俺を受け入れてくれるだろうか…
騙してた俺を…自信が無い…)
「ヨシ直ぐに用意するぞ!」