極上弁護士の耽溺プロポーズ
「あら意外。妬いたりしないんですねえ」

戸惑いつつも冷静に受け答えをするわたしに、椎葉さんは不思議そうな顔をした。

「妬く?」

「嫌じゃないんですか。先生とほかの人を想像するのは」

正直、嫌だという考えに結びつかなかった。

けれどわたしははっとして椎葉さんに告げる。

「あ、わたし、今記憶失くしてるから……」

「記憶を失くしてる?」

眉をひそめた椎葉さんに頷く。

わたしにだって人並みに嫉妬心はあるはずだ。

けれど今柊一くんのことでやきもきしないのは柊一くんへの恋心を忘れ去っているからだろう。

「おい、なんの話をしている」

不意に柊一くんの声がして、わたしはドキッとした。

応接室の入り口から、柊一くんが長いストライドで近づいてくる。

「橘さん、記憶がないんですか?」

唐突に訊いた椎葉さんに、柊一くんの顔が微かに強張ったのがわかった。

「……光希、椎葉に余計なことは言うな」

「あの……柊一くん」

「椎葉、この謄本を至急取り寄せてくれ」

柊一くんはわたしを遮るように椎葉さんに告げると、すぐに応接室に戻っていってしまった。

「……」

まごつくわたしの隣で、椎葉さんは不可解そうな顔をしていた。
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