白雪姫に極甘な毒リンゴを 2 (十環の初恋編)

「そうそう、私
 キャラメルを落としちゃった?」


「これですよね?」


 そう言って、キャラメルを差し出した。


「ありがとう。
 ここって、屋上に続く階段でしょ。

 今日は土曜日で
 誰も通らないかなって思って
 ちょっとここでサボってたの。

 キャラメルを食べながら
 本でも読もうかなって思ったのに
 いつの間にか寝ちゃったのね。

 フフフ」


 話してみると、不思議な人。


 目を覚ました時には
 守ってあげたくなるような
 可愛さがあふれていたのに。


 今は大人の色気みたいなものも感じる。


「名前、聞いてもいいかな?」


「あ……俺……

 桃瀬十環です」


「私は、如月 結愛(きさらぎ ゆあ)
 2年だよ。

 十環くんは、1年生かな?」


「え……と…… 

 ちゅ……中3です……」


 ビックリされたよね?


 この学園に入学していない俺が
 制服を着て
 校内をうろついているんだから。


 そう思ったのに
 結愛さんは相変わらず
 ニコニコ微笑んでいる。


「もしかして
 この学園を見学に来た?」


「はい。学園長の許可をもらって。

 友達と二人で」


「フフフ。

 制服を貸して
 見学させてあげるなんて。

 学園長のお気に入りなのね。
 十環くんは」


「お気に入りなんて……

 俺……学園長に会ったことないし……

 この学園にも、入るつもりないし……」



「十環くん
 4月からここに入学するんじゃないの?

 ちょっと、がっかりかも」


「え?」


 俺が入学しないと、がっかりって……

 どういうこと?


「だって……

 目を開けた瞬間
 十環くんの宝石みたいに煌めく髪が
 目に飛び込んできて……

 思っちゃったから……」
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