白雪姫に極甘な毒リンゴを 2 (十環の初恋編)

「あのな、十環。

 俺だって本当はさ
 お前にいて欲しいんだよ。

 お前がいるとさ
 あの倉庫の空気が優しくなるっつうか
 穏やかになるっつうかさ。

 仲間もみんなお前のこと
 かわいい弟って思ってんだよ。

 それなのにお前はさ
 俺たちの前ではいっつも笑顔作って。

 言いたいことがあっても我慢してさ。

 だけどお前、
 一颯の前では違うだろ?

 言いたいこと、言えるんだろ?

 素の自分でいられる相手なんだろ?

 一緒に高校に行きたいって
 思ってるんだろ?」



「……思って ……ます。

 一颯と一緒の高校に行ったら
 楽しいかもって。

 でも俺にとって
 TODOMEKIも大事な場所で。

 どちらかしか手に入らないなら……

 俺は……

 TODOMEKIのみんなと
 一緒が良いです」


 俺の言葉を聞いて
 総長は優しく俺の頭をポンポンとした。


「本当だったらさ
 お前をTODOMEKIのメンバーのまま
 明虹学園に行かせてやりたい。

 でも、ごめんな。
 俺は総長だから、それは許可できない。

 白夜会との抗争に発展しかねないような
 そんな危険なことはさ。

 だからこの前
 俺がお前に言おうとしたことは
 TODOMEKIのメンバーから外れて
 明虹学園に行けってこと」


「でも……」


「お前が、TODOMEKIの仲間ってことには
 変わりはない。

 チームのみんなだって
 お前がいなくなるのは嫌なんだと。

 十環が来たいときには
 いつだってあの倉庫に来ていい。

 その代わり
 顔がばれないように変装とか
 マスクとかして来いよ。
 
 あと、TODOMEKIがどこかの族と
 やりあうとかになっても
 お前は絶対に来るな。 

 いいな」



 やばい。 


 俺、嬉しくて涙が止まらない。


 またTODOMEKIのみんなと
 一緒にいられること。


 一颯と同じ高校に通えること。


 そして、総長が俺のことを
 ここまで大事に思ってくれていたこと。


 その全てが嬉しくて
 人前では絶対に泣かないって
 決めて生きてきたのに
 俺は総長の隣で
 涙が枯れるまで泣いた。


 そして
 俺の涙腺の活動が停止したとき
 総長が優しく微笑んだ。
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