白雪姫に極甘な毒リンゴを 2 (十環の初恋編)
「もしかして一颯って
友達いないの?」
うつむきながら
うなずく一颯。
素直なところもかわいいじゃん。
「この部屋に友達を呼んだのも
俺が初めてとか?」
「……悪いかよ」
いや……
悪いというか
なんか嬉しいかも。
「じゃあ、俺のお願い聞いてくれたら
一颯と友達になってあげる」
「は?
十環のお願いってなんだよ」
「遊びに来てくれない? 俺の家に。
だってさ……
俺も自分の部屋にさ
友達を入れたことがないからさ」
一颯はムクっと起き上がると
犬のぬいぐるみを抱えたまま
俺のところに来た。
「行ってやっても…… いいけど」
一颯って
本当に素直じゃないんだから。
ま、俺もだけどね。
「俺さ、そろそろ帰るよ。
父さんと母さんに…… 謝らなきゃ……」
俺がそうつぶやくと
一颯は俺に
人間の赤ちゃんサイズの
犬のぬいぐるみを手渡した。
「お前に1日だけ、貸してやる。
この『ごんぞう』が一緒なら
なんとかなるから。
多分」
真ん丸なつぶらな瞳で
愛くるしい顔をしているのに。
なぜか眉毛が太すぎる
アンバランスな犬のぬいぐるみの名前が
『ごんぞう』って。
それに俺
弱っているとき、ぬいぐるみに
傍にいて欲しいと思う感覚なんて
1ミリも持ち合わせていないんだけどな。
そうは思ったが
一颯が俺に向ける笑顔が穏やかで
つい『ごんぞう』を受け取ってしまった。
そして一颯の家を出た後
『ごんぞう』を抱きかかえバスに乗ることが
結構恥ずかしかった。