白雪姫に極甘な毒リンゴを 2 (十環の初恋編)

 自分の家についた。


 一颯と話した時には
 親に謝ろうと思えたのに。


 ごちゃごちゃな感情が入り混じっていて
 玄関ドアを開ける勇気が出ない。


 『ごんぞう』をふと見ると
 凛々しい眉毛にまっすぐな瞳が
 俺を見つめていた。


 ただのぬいぐるみなのに
『大丈夫だよ』と
 励まされている気がするのはなぜだろう。


 そして
 一颯と総長の顔も浮かんできて
 その幻像に背中を押されるように
 俺は自分の家の玄関のドアを開けた。



「……ただいま」


 いつも俺の声を聞いて
 笑顔で駆けてくる母さん。


 でも今は
 パタパタと鳴るスリッパの音は
 全くしない。


 そりゃそうだよな。


 俺
 すっげー酷いことを
 言っちゃったもんな。


 父さんたちがいるであろう
 リビングに行くか
 自分の部屋に逃げ込むか悩んだ。


 時間とともに
 自分が親に言ってしまったことへの
 罪悪感が募っていく。


 どんな顔をして
 親に会えばいいかわからない。


 逃げたい。

 今すぐこの場所から逃げ出したい。


 俺って本当に、情けないよな。


 そんなんだから
 本当の母親にも捨てられたんだよな。


 そう思いながら
 玄関のドアを開け
 外に飛び出そうとした。



「待って……」



 俺の背中越しに
 消えそうなほどか細い声が。


「十環くん……」


 ヒックヒックとすすり泣きながら
 俺の名前を呼んだのは
 母さんだった。
< 92 / 161 >

この作品をシェア

pagetop