白雪姫に極甘な毒リンゴを 2 (十環の初恋編)
自分の家についた。
一颯と話した時には
親に謝ろうと思えたのに。
ごちゃごちゃな感情が入り混じっていて
玄関ドアを開ける勇気が出ない。
『ごんぞう』をふと見ると
凛々しい眉毛にまっすぐな瞳が
俺を見つめていた。
ただのぬいぐるみなのに
『大丈夫だよ』と
励まされている気がするのはなぜだろう。
そして
一颯と総長の顔も浮かんできて
その幻像に背中を押されるように
俺は自分の家の玄関のドアを開けた。
「……ただいま」
いつも俺の声を聞いて
笑顔で駆けてくる母さん。
でも今は
パタパタと鳴るスリッパの音は
全くしない。
そりゃそうだよな。
俺
すっげー酷いことを
言っちゃったもんな。
父さんたちがいるであろう
リビングに行くか
自分の部屋に逃げ込むか悩んだ。
時間とともに
自分が親に言ってしまったことへの
罪悪感が募っていく。
どんな顔をして
親に会えばいいかわからない。
逃げたい。
今すぐこの場所から逃げ出したい。
俺って本当に、情けないよな。
そんなんだから
本当の母親にも捨てられたんだよな。
そう思いながら
玄関のドアを開け
外に飛び出そうとした。
「待って……」
俺の背中越しに
消えそうなほどか細い声が。
「十環くん……」
ヒックヒックとすすり泣きながら
俺の名前を呼んだのは
母さんだった。