しあわせ食堂の異世界ご飯6
「ライナスさん、これを飲んでください!」
「早く飲まないと、死んじゃいます……」
 焦るアリアと、涙声のリズ。
 そして怒涛の展開についていけずおろおろしているだけのカミル。シャルルは急いで医者を呼びに行った。
 飲ませても口の端からこぼれてしまい、埒が明かない。どうしようとアリアが困っていると、「お姉さま」と、リズが代わりを買って出た。
「私よりはリズちゃんのほうが言うことを聞いてくれそうだもんね。お願いね」
 アリアはリズに場所を譲り、ライナスの背中を支えられる位置に移動する。
(愛してやまない娘からのお願いなら、ライナスさんもきっと……)
 そう思っていたアリアだったが、次にとったリズの行動に目が点になる。
「我儘を言わないでちゃんと飲んでください、お父さま!」
 涙をいっぱい流したリズが、スープを容赦なくライナスの口の中へ流し込んで飲み込むように鼻をつまんだ。
 緊急事態だったので確かに強硬手段も大切だったかもしれないが、その容赦のなさに周囲は思わず頬が引きつる。
「わたしも一緒に罪を償います。だから、だから……どうか生きてください」
 リズはそれだけ言って、ライナスに覆いかぶさって泣き崩れた。
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