しあわせ食堂の異世界ご飯6
「ライナス様に早く食べてもらいたかったんでしょうね、可愛い。リズちゃんは一つひとつの作業がとても丁寧なので、珍しいです」
「これでは成長を見せることにはなりませんね……」
 ライナスもシフォンケーキを手に取っていて、予想以上のかたちの悪さに苦笑している。家で作ってもらったときは、もっと綺麗な切り口だったと話す。
「アリア様にいただいた包丁をとても大切にしていましてね。いつかアリア様のような包丁捌きができるようになりたいと、そう言っていました。しかし……」
 これからはリズが包丁を手にする機会はぐっと減るだろう。
 ライナスはアリアが妃候補ではなくなりエストレーラに帰ると思っているし、リズにも皇妃としての厳しい教育が待っている。
 刺繍であれば夫となるリベルトのために練習する必要があるけれど、料理は専属の料理人がいるからリズ自らする必要はない。
「ライナス様?」
「ああ、いえ……すみません。なんでもありません。ただ、寂しくなるなと、そう思ったのです」
 ライナスはシフォンケーキを口に含み、頷く。
「味はいつもと同じで、美味しいです」
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