しあわせ食堂の異世界ご飯6
 今ではリズベットのお気に入りになっていて、毎日少しずつ食べているのだとライナスに話す。
「今日はわたしがお礼に紅茶を淹れてあげるんです」
「そ、そうか……。この前まではあんなにパパ、パパと言ってくれていたのに……」
 娘の成長が早すぎて寂しいというライナスに、リズベットは相変わらずの過保護だと思う。
「お父さま、わたしはもう七歳です! 公爵家の娘として、立派な淑女になります」
 もう『パパ』と呼ぶリズベットはいないのだと、自分の口から告げる。これからは、アリアのように素敵な女性になりたいと思っている。
「そうだな……。リズが立派になって、私は誇らしいよ。だが、あまり無理をしすぎないよう、それだけは気をつけてくれ」
「はい」
 ライナスの注意で思い出すのは、仕事で疲れ切ったリベルトとローレンツの顔。今にも倒れそうだった顔色に、リズベットもすごく焦った記憶がある。
(わたしにあそこまで仕事をするのは無理です……)
 見栄を張って淑女になると言ったものの、実際リズベットはまだ七歳なのだ。
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