婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する
「なに? 滞在日数は、まだあと三日残っているではないか」

「そうです。ですが、これ以上私がこの地にいる意味はないと判断いたしました」

 スチュアート王子の銀色の瞳が、激しく揺らいでいる。

「なぜだ? パーティーだぞ。楽しくはないのか?」

(アホにもほどがある……)

 ラスカル大臣はスチュアート王子の問いかけには答えずに、立ち上がる。

「それから、国交締結の話はなしにしていただきたい。我々にも、友好国を選ぶ権利がある」
 
 踵を返し、鮮やかすぎて品の損なわれている深紅の絨毯を足早に歩き出す。

 そして、スチュアート王子を振り返ることもなくホールをあとにした。


 ラスカル大臣の一行は、ポルトス王国で作られた精緻な彫刻模様の馬車に乗り、アッサラーン城を離れていく。馬車の窓越しに、遠ざかっていく宮殿を眺めながら、ラスカル大臣はため息交じりに呟いた。

「遠渡はるばる来たというのに、無駄足だった。やってられないな」

 芸術性に乏しい王宮内に、政に無関心の王と王妃。おまけにドラ息子の王子は、恥も外聞も捨て、教養のない娘に入れあげている始末。
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