三月のバスで待ってる



あっという間に1日が終わってしまった。

5時を過ぎると模擬店や出し物の人たちは片付けをはじめ、後は夜の部の後夜祭だけ。

後夜祭の手伝いをすることになったという杏奈と別れて、私の足は自然と、ある場所に向かっていた。

3階の端っこにひっそりとある教室ーー美術室だ。

全校生徒の作品が飾られているので、美術室だけでは収まりきらず、3階にある隣の教室や廊下まで使ってずらりと絵が展示してある。

見渡すかぎり、壁じゅうにずらりと貼られた絵は圧巻で、思わずため息が洩れてしまう。

私が描いた絵は、美術室の後ろの壁に貼られていた。

三角屋根、赤い標識、ところどころ錆びた時刻表、木のベンチ。

私にとって身近な場所。
私の好きな場所。

描いている時は夢中だったけれど、こうして並んでいるところを見ると、なんだか感慨深い。一生懸命描いてよかった、と思う。

「これ、いい絵だね」

ふいに扉のほうから声がして、私はビクッとして振り返った。そこに立っている人の姿を見て、さらに驚く。

「え……え?なんで?」

そこにいたのは、想太だった。しかも、運転手姿のままで。

「先輩に頼んで変わってもらったんだ。知り合いに誘われて、どうしても来たくなって」

「知り合いって……」

誰、そう言おうとした口をつぐんだ。

誰かなんて、訊かなくてもわかる。きっと、中村先生だ。
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