ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
主治医、か・・
別に今となっては
ナオフミさんに“私の主治医”という肩書きを背負って貰わなくてもいい
俺は兄だから・・といったあの日の苦しそうな彼の声を想い出してしまうから・・
だからナオフミさんには私の大切な愛しい人という立場でいてくれればいい
でも、目の前にいるこの人に主治医を背負って貰うっていうのもな
なんだか今ひとつしっくりこないというか
ブイーン・・・
「松浦です、失礼します。」
薄いブルーの手術着を着用した男性が突然開いた自動ドアの向こう側からこちらに入ってきて、ベッドに横になっている私のほうに近づいてきた。
「高梨さん、はじめまして。リハビリ担当になりました松浦です。よろしくお願いしますね。」
彼も執刀医同様にマスクに顔半分覆われていたため、表情をしっかりと窺うことはできなかったが、その声からはなんとも爽やかな雰囲気が漂う。
『あっ、よろしくお願いします。』
ベッドに横になったまま左手を執刀医に預けている私はありきたりな返事をするぐらいしか余裕がなかった。
そんな私に松浦さんは優しく微笑みかけた後、私の胸元で仕切られたカーテンの向こう側へ行き、執刀医と向かい合わせになった。
「早い登場じゃん♪」
「今、ちょうどリハビリの患者さん、途切れてたんで。FDP腱、繋がりました?」
「おう、完璧よ♪ここね、6-strandで縫っておいたんだけどさ。」
「美しいですね・・・相変わらずな腕前って感じで。FDPの滑り具合も好感触ですし、ひっかかりもないし・・・リハも上手くいきそうな予感です。」
「だろ?でも癒着しやすいだろうから気をつけてねん♪」
なんだか楽しそうな会話が聞こえてきた。
その内容については全くと言っていいほど理解できなかった私は上を見上げながら彼らのやりとりをじっと見つめていた。
「そういえば、森村先生。」
「ん?何?」
突然、何かを思い出したように執刀医の名を呼んだ松浦さんという人は、更に口を開いて言葉を続けた。
「今、ここの入り口の傍で産科の日詠先生が壁にもたれながら立っていらっしゃったんですが・・・センセイ、日詠先生をお呼びになったんですか?」
え?
ナオフミさんがすぐそこにいるの?
さっきあんなにハッキリとここへの入室を断られたのに?
ドアの向こう側に彼が居る・・の?