ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来




「あっ、どうも!!・・・・ホンモノですよね?・・・・・ウソーー。いいですよー歓迎です!・・・・・・大歓迎ですよ♪」


産科専門医になってからの整形外科患者の手術見学
伶菜がきっかけな ”初めて” が
またこれで増える


ホンモノってですよね?って意味がよくわからないが
とりあえず許可をもらえた


そう安堵して受話器を置いたのに
その直後、ついさっきは愛想のよさそうな声で俺の手術室入室を許可してくれた女性スタッフから

「もしもし、お待たせしてスミマセン・・・今、重要箇所の縫合に着手しておりますので、申し訳ありませんが、入室はお断りさせて頂きたいのですが。」

と断りの電話が来た。



重要箇所の縫合に着手・・か
それなら入室拒否も仕方がないな

でも、俺の心配は消えない

伶菜がどうなっているのか
森村医師がどうしているのか


私情を挟むなって医師としてあってはならないことなんて百も承知だが
手術室エリアから離れることなんかできない


そんな俺は入室できないことをわかっていながらも
伶菜がいる手術室5番の出入口で立っているしかなかった。


「あれ?日詠先生?産科の?」

『・・・ええ。』

「ここ、今、整形外科のオペ中ですよね?」

『・・・ええ、まあ。』


突然現れた男性スタッフに不思議そうな顔で声をかけられても。


「僕、リハビリスタッフの松浦って言います。中に何か用事があるようでしたら、伝言しますけど。」

『・・・いえ、大丈夫です。』

「じゃあ、なんでこんなとこに?」


余程心配をかけてしまうような顔をしていたのだろうか?
初対面の人・・・松浦さんに手術室前で問い質された。

『・・・・・』


手の怪我だから
全身麻酔ではなく、おそらく局所麻酔
伶菜の意識ははっきりしている筈

自分の目で
自分の耳で
伶菜の様子を確認しないと落ち着かない


「日詠先生?」


彼の代わりに
自分がこの中に入りたい


『・・・心配で・・・』

「手術中の患者さん、お知り合いですか?」

『・・・・・俺の・・・大切な人です。』



俺は見ず知らずのリハビリスタッフの松浦さんに
私情満載の返答をこぼさずにはいられないぐらい
この時の自分はダメな医師になっていた。



< 147 / 542 >

この作品をシェア

pagetop