ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
『じゃあ、ゆっくり聴かせてもらおうか。』
続いた想定外のせいで、もうドサクサ紛れでいいかと思った俺は
着ていたスーツを脱ぎ、伶菜の隣に滑り込んだ。
ゴロリと寝そべりながら向き合う格好となった俺達。
今までの俺なら、ここでさっさと抱こうとしている女を組み敷く格好になるのに、まだYシャツにネクタイ姿のままだったせいもあってか俺はそれをすることに躊躇いを覚える。
そんなことをしたら、
抱くという行為が心が伴わない行為になってしまう
そうも思ってしまった俺は、彼女の柔らかい髪にすうっと指を通すことで、一度沸き立った本能を抑え込む。
突然のその俺の行動に驚きを隠せていない伶菜。
笑って欲しいと思った俺は、指に絡んだ髪をそっと摘み、彼女の鼻の頭をその髪の毛先でこしょこしょと撫でた。
「くすぐったい~。」
伶菜は目をギュッと瞑って、本当にくすぐったいような表情を見せる。
その顔も可愛くて、それをまだ見ていたい俺は髪の毛で撫でる行動を止めない。
「もう~。イジワル・・・お兄ちゃんがこんな人だったなんて知らなかった。」
『こんな人じゃダメか?』
「こんな人じゃダメじゃない・・・逆に出逢えていなかったら・・・なんて考えたくもないぐらい。」
出逢えていなかったらという仮定の話を
頭の中で具体的に想像しているのだろうか?
場を和ませるつもりでやったイジワルな行為だったはずなのに、
彼女の声のトーンが急に下がる。