ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来



死ぬ気でリハビリやれと言われた時
リハビリはゼイゼイ息を弾ませながらやるんだと思っていたけれど

実際はそんなモノじゃなかったな

体力勝負よりも精神力勝負
今、やってるリハビリはそんな勝負だな


はっきり言って疲れる

まだ始まったばかりだけど
いつまで続けたらいいんだろう

そんなハードな勝負を・・・





ハアーッ・・・


私は寝転がった状態でそう思いながらひとつ大きな溜息をついた。

その瞬間





コンコンッ!



突然、病室のドアをノックする音が聞こえてきてしまった。


『ハイ?』


聞こえたのはそのノック音だけで、誰がノックしているのかまでわからなかったのに

なぜか私はそれをしたのは森村医師と決め付けて少々不機嫌気味に返事をしてしまった。



だってまた、彼は私にプレッシャーをかけてくるかと思ったから。

でもそれだけなんかじゃなくて、いつも彼とやりとりしている時の不機嫌な自分のままでいたかった。

じゃないと私、彼の意外な素顔をついつい詮索してしまいそうだったから。




でも



「伶菜?・・俺。今、ちょうど手が空いたから来てみたけど、また後で来たほうがいいか?」



その声は私が勝手に予測していた人のモノとは異なっていた。


『あっ、だ、だ、大丈夫。どうぞ!』


だから私はついついどもって返事をしてしまった。






ガチャッ!


「左手の具合、どう?」



病室の入り口から入ってきたその人は緑色の手術着に白衣を羽織ったいつもの仕事スタイル。
しかもその首元にはいつもは見かけない聴診器までもがかけられていた。




「あっ、コレか?今朝、風邪ひいた妊婦さんの肺の音を聴くために使ったんだ・・・・・俺が聴診器持ってるの、そんなに珍しい?」


『・・・うん、ドラマとかに出てくるお医者さんみたい・・』



本当はその顔をじっくり見たくて仕方なかった。



けれども、ドアノックされた時にうっかり不機嫌な返事をしてしまった私は少しでもそんな自分の不手際を隠し通すためにあえて彼の首元にかけられていた聴診器を指差すことで自ら会話を誘導した。




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