ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


「確かに普段はあんまり聴診器を使う機会ないからな。」


私がドラマに出てくるお医者さんみたいと言ったせいか彼は少々照れくさそうにそう言いながら、首元にかけられていた聴診器を外して、白衣のポケットの中にそれを突っ込んだ。


「あっ、そうそう、コレ、食べるか?医局の休憩所にたくさん置いてあったから持ってきてみた。」


更に彼は聴診器を突っ込んだポケットから銀色のフィルムに包まれたお菓子らしきものを取り出して私に見せてくれた。



『あっ、レーズン入りバターサンドクッキー♪』

「学会で北海道に行った消化器内科のドクターからのお土産って書いてあったな。お前、スキだろ?」


『うん、うん!!!食べる、食べる』



彼が差し出したそのお菓子は彼が言う通り北海道名産であり、この辺りでそれを手にするためにはお土産で頂くか、百貨店などで行われる北海道物産展などに赴くしかなかった。

けれども自分の目の前に突如現れたそのお菓子の存在によって、私はさっきまでの“自分の不手際を隠し通そう”という姿勢がすっかりそっちのけになるぐらいテンションを上げて彼のほうに右手を伸ばす。


自分で言うのもなんだけど、すっかり餌を欲しがるわんこ状態な私に彼はゆっくりとそのお菓子を差し出した。



『ありがとう!いただ・・・あれ?』



あと少しで自分の手中に入るはずだったそのお菓子が彼によって私から遠ざけられてしまった。


「やっぱり入院中はあんまり動かないから、いらないよな?そういえば伶菜、ゴハンの量を減らしていたぐらい真剣にダイエットしていたしな。」


両腕を後ろに回しながら私に対して少々イヤミっぽく敬語まで使いイジワルな笑みを浮かべた彼。



『そんなぁ、レーズンバターサンドクッキーいい、いい、食べた・・・あむっ?』


「美味いだろ?」



コレ、いつものパターンじゃん!

油断したスキに突然、口の中に食べ物を放り込まれるってヤツ
過去にもみかん大福とかトロトロオムレツとかを放り込まれたっけ?




『んーおいしい♪』



でも幸せです
ダイスキな人にこうやって食べさせて貰えるのは!

他人に見られたら恥ずかしいですけど・・・


でもあのまますぐにナオフミさんからお菓子を受け取っても、左手がこんなにしっかり固定されてるから自分で包装紙すら開けられなかったよね?

もしかしてナオフミさんはそれまで予想して私にお菓子を渡そうとしなかったのかな?

もうそうなら、彼のそういうささやかな気配り
嬉しかったりする

やっぱり私、幸せですッ///




「よかった、元気そうで。さっき、ドアをノックした時はなんだかだるそうな声してたから。」

『んがあっ?』


彼の優しさと自分の幸せを噛み締めながらレーズンバターサンドクッキーを食べていた私は彼のその言葉を耳にした瞬間、眉間にうっすらと皺を寄せマヌケな声をあげてしまった。




「なんかあったか?リハビリで・・・」




やっぱり気がつかれてたんだ
私がうっかり不機嫌な返事をしてしまったコトを・・



< 184 / 542 >

この作品をシェア

pagetop