ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「まだリハビリ始まったばかりですから、上手くできないとかってあんまり焦らなくてもいいですよ。縫った腱はある程度時間が経たないとしっかりくっつかないですから・・・」
もちろんそんな私の心の動きを松浦先生はやはりいとも簡単で読んでしまっていたようだった。
そうだよね、焦ったところですぐに指がよくなる訳でもないし
森村医師が他人にヤブ医者だの、手術失敗しただのどういう風に言われようが
私には関係ない
リハビリの成績が悪くて困るのは私なんだから
だから無駄なプレッシャーなんて感じる必要ないよね
今の私に必要なのは、プレッシャーなんかじゃなくて
恐怖心を追い払えるような集中力
ただそれだけ・・・・・
私は自分自身にそう言い聞かせて松浦先生の指導のもとでリハビリに再び取り組んだ。
「だいぶ要領覚えましたね!いい感じです!そろそろ終わりにしましょうか?それじゃ、さっき覚えて頂いた自主トレーニングメニューを1時間毎に10回ずつ行うようにして下さいね!お疲れ様でした!」
リハビリが始まって1時間、指をどれくらいの範囲で動かしてよいのかという感覚をようやく体得した私に松浦先生は彼らしい爽やかな笑顔でそう声をかけてくれた。
『終わったあ・・・』
こんなに集中力を要した作業は本当に久しぶりで、心身ともに疲労困憊状態だった私は右腕に繋がっていた点滴をひっかけてある点滴台に身体を預けるようにしながら自分の病室に戻った。
そして祐希を小児科病棟で預かって貰っているのをいいことに私はすぐにベッドに倒れ込んだ。