ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


『ううん、なんにもないよ。うっかり居眠りしちゃってたから・・・返事がだるそうに聞こえちゃったのかなって。』


心配そうな表情を浮かべながら問いかけてきた彼に対して私は嘘をついた。



昨日、この病室でナオフミさんと森村医師が言葉を交わした時、ナオフミさんは珍しく不機嫌な態度を表出してしまっていた

だから、
“ナオフミさんも森村医師に対してあんまりいい感情は抱いてはいない、だからそんな森村医師とナオフミさんを間違えたなんて、絶対に言えない”


それが私の見解。




『それにリハビリは凄く丁寧に教えて貰っているから、大丈夫だよ♪』


ましてや忙しく飛び回っているナオフミさんに余計な心配をかけたくない

リハビリがあまりにもしんどいとか
いつまでこんな状態が続くのかとか
ちゃんと元通りに治るのかなとか・・・


そう思った私は更に嘘を重ねた。



ここは彼の職場

そんな場所で私が彼に心配をかけるような真似をしたら彼はきっと、彼が医師としてやるべきことを遂行するペースが守れなくなる

それだけは絶対に避けたい

だって私は医師としての彼の足を引っ張る存在にはなりたくないから・・・



「そっか、それならいいけど・・・・もしなんかあったらちゃんと俺に言え、、な。俺にできることならやってあげたい、そう思ってるから。」


『うん♪ じゃ、早速、ナオフミさんが食べてるそのレーズンバターサンドクッキー、ちょーだい!』


自分がついた嘘を耳にしても尚、心配そうな表情を浮かべた彼に対して、私はナオフミさんが知っている“いつもの私”を演じた。



「ったく・・甘いモノには本当に目がないよな。でもあまりにも美味しそうに食べるからついつい食べさせてあげたくなるんだけどな・・・」


そしてナオフミさんもようやく“いつもの彼”の様子を見せてくれた。


「でも、元気そうでよかったよ。手術って全身麻酔じゃなくて手のみの部分麻酔だっただろうから、かえって気分的にしんどかったんじゃないかなって思って。」



そう
こういうところも
いつもの優しくて、心配性な彼。



「おっと、もう11時か・・・カンファレンスに行かなくちゃな。また、手が空いたら来るから。何か欲しいものあるか?」



そんな彼もやらなきゃいけないことは山のようにあるようで・・・・

何か欲しいものあるかと聞かれても
それは今の彼には絶対伝えられないよ


だってそれは
“アナタとこのまま一緒にいる時間”


ただそれだけ
そんなワガママしか思いつかないんだから



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