ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
『レーズンバターサンド、おかわり!もしまだ残っていたらでいいけど・・・』
「・・・お前らしいモノだな・・わかった、なくなる前に早めにゲットしておく。じゃ、また。」
『うん、時間があったらでいいからね♪』
「了解。」
私は右手の人差し指を立て軽くウインクしながらまたまた嘘を重ねた。
そんな私に彼はこの時、まんまと騙されていたようで、特に心配気な表情を浮かべることなくおでこに右手を当てて敬礼のマネをして見せてくれながら病室を後にした。
本当はもっと彼に甘えたかった
手術前、自分でコントロールできなくなった左手の薬指と小指がまたちゃんと動くようになるのか怖くて
手術中もそれがちゃんと成功するのかが怖くて
子供みたいだけど彼に・・・ナオフミさんに傍に居て欲しかった。
今もそう
リハビリしんどく思えて、ちゃんと訓練をこなしていけるのか不安でたまらない
その気持ちを口にしたかった
それを口にすることで楽になるかもしれないと思ったから
でも、忙しくて、心配性の彼の前で
怖いとか、不安だとかそんなコト、言えない
だから私はなんとか自分の中でそういう気持ちを上手にコントロールしなくてはならない
きっとそうすることが・・・・・ナオフミさんのパートナーとしてふさわしい対応だと思うから・・・
私はグッと飲み込んだ自分の正直な想いを胸の奥深くにしまおうとベッドに顔を埋めながら息を止めた。
苦しい
それは息を止めていたからなんかじゃない
それは自分の正直な想いを一切表出することなく飲み込み続けるという苦しさ
でも神様は幸せだけを与えない
その苦しさを乗り越えるのも私に与えられた神様からの宿題
きっと私だけじゃない
幸せと苦しさが背中合わせで共存しているのは
きっと、私だけじゃないんだ
誰だってそうなんだ・・・・
私は一息つきながら自分にそう言い聞かせた。