ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「伊藤先生、お忙しい中、今日も祐希をお預かりして頂きスミマセン・・・明日からはリハビリルームに彼も一緒に連れて行きますので・・・」
プレイルームの奥からは女の子の声も聞こえてきて、その声からも伊藤先生の忙しさを予測した私は丁重に頭を下げながら彼女にそう告げた。
「いえいえ、そんな必要ナシですよ!」
彼女は目を見開きながら小刻みに首を横に振った。
『えっ、じゃあ・・・』
「ええ、今後もこちらでお預かりしますよ。祐希クンはすっかりここに溶け込んでますし、、彼は私の大切な担当児ですから。」
『・・・でも・・・』
「それに、高梨さんが退院されてリハビリに通院される間も、高梨さんのリハビリ時間中は高梨さんがリハビリに集中できるようこちらでちゃんとお預かりすることになっていますから!」
彼女は先程おもちゃの電車を直して貰った男の子達や祐希だけでなく私にも優しく微笑みながらそう言ってくれた。
そんな彼女の口から出てきた“リハビリに集中できるよう”という言葉によって、自分がリハビリルームに祐希を連れて行こうとしていたことがいかに無謀な計画だったかを思い知った私。
確かにそんなの無理に決まってる
大人ばかり、しかもいろいろな人がいて雑音の多いリハビリルームで遊び盛りの祐希が大人しくしていられるはずがない
縫った手指の腱が切れないように配慮しながら指を動かすというかなり集中力を要するリハビリをしながら、彼を見守ることなんて無理に決まってる
忙しい伊藤先生には申し訳ないけれど
今の私は、先生のありがたい言葉に寄りかからせて貰います
『ありがとうございます。お忙しい中、本当に申し訳ありませんが宜しくお願いします。伊藤先生には本当に良くして頂いて、助かっています。』
「とんでもない・・」
『それに祐希のベビーベッドの準備から食事の手配までもして頂いて・・・先生のご配慮、いくら感謝しても感謝しきれないです。』
私は更に深く頭を下げながらお礼の言葉を口にした。
「あの!!!高梨さん、頭を上げて下さい!」
あのほんわかとした伊藤先生の声が別人のように慌てていた。
『いえ、本当に感謝していて・・』
心の底から彼女に感謝をしていた私はそれでも頭を上げなかった。
でも、
「違うんです!そうじゃないんです!」