ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


今日は何かと質問されることが多く、
上手く返答できない自分が情けなく思えてくる

そんな俺に気遣って下さったのか、矢野先生はポケットから缶コーヒーを取り出し、一緒に飲もうかと差し出してくれた。

遠慮なく受け取り、お互いに顔を見合わせて飲み始める。
午後8時という診療時間外だからこそのリラックスしている時間帯だ。



「高梨さん・・・・かわいい子だね。」

『・・・ええ、まあ。』

「どんなところが?」

『・・・弱い自分とちゃんと向き合える強さがある・・・』

「へ~、彼女の好きなところ、そこなんだ。」

『あっ!!!』



矢野先生の巧妙な誘導尋問、プラス、リラックスタイムの罠に嵌った。

策略通りだったのか矢野先生は笑顔。





「どおりで、君を婿に欲しがっていた三宅も諦めたわけだな。」

『矢野先生・・・ご存じだったんですか?』

「ああ、僕ね、名古屋医大の三宅教授とは、診療科は違うけれど、同期なんだ。ついでに今でも週1一緒に酒を酌み交わす仲だね。」

『飲み仲間・・ですか・・』

「飲みにいけない時は、翌朝、同じ喫茶店でモーニング食べてる。別に待ち合わせしているわけではないけどね。」




ハイ、これ・・と白衣のポケットから取り出したのは、名古屋発祥の全国展開している珈琲店でコーヒーを注文すると付け合わせで出てくる豆菓子。

甘じょっぱい味がコーヒーと合うそれ。

個包装されているものを持ち帰って来られたらしい。

遠慮して断るのも失礼かもと思った俺は素直に手を出して受け取った。



「高梨さん、あの高梨の娘さんだってね。」

『それもご存じでしたか・・・・』

「ああ、俺も高梨が産科医師としてこの病院にいた時からここにいたから。それに幼少期のキミも知ってる。高梨が可愛がっていたからな。」



こんな身近に、三宅教授や福本さん以外に高梨の親父のことをよく知っている人間がいるとは思っていなかった

だからかもしれない
診療科の異なる俺に頻繁に声をかけてくれていたのも





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