ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来



「兄妹だった君達がね・・・再会してからも兄妹の関係で過ごしていたんだって?」

『ええ、まあ。』

「複雑だね。一歩踏み出して兄妹という関係から抜け出して、恋愛関係になるのも。今までの生活に慣れていればいるほどな。」



リラックスタイムのせいなのか、真昼間なら話しづらいであろう内容も俺の耳にすんなり入ってくる
矢野先生の人柄のせいもあるだろう

本音をこぼしたくなる


『大切すぎて・・・どう抱きしめていいのか・・・』


白衣を着たままでも
胸の奥にずっと押し込んできたはずの本音を・・・




「そうか・・・そればかりは模範解答はないよね。それに、猪突猛進に彼女の向かっていく男まで現れたらね・・・・」

『矢野先生?』

「森村・・・あいつ、やっと過去の後悔を精算できるチャンスだから、俺にオペさせて下さいって、心おきなく学会行ってきてくださいって、懇願してきた。」

『・・・・・・・』


矢野先生は学会に出かけているから、伶菜の手術を執刀できなかったのはなく、正確には、伶菜の手術の執刀をしなくてもいいように学会に行かされたのか?



「悪かったね。森村のやる気を引き出してしまったようで。」

『いいえ。ちゃんと治療して頂いているようですから。問題ありません。』

「そんなことにしておいて、こんなことを言うのは筋違いかもしれないけれど・・恋愛は先着順じゃないから・・・難しいな。」



眉を下げて笑う矢野先生。

恋愛は先着順じゃない
この言葉はおそらく俺に対する忠告

愛弟子の能力、性格を把握しているだからこその忠告なんだろう



『難しいですね。でも、先着していて胡坐をかくなんて余裕、俺にはないです。』

「日詠くんが・・かい?」

『ええ・・・どうやったら彼女を大切にできるか、幸せにできるか・・・想いが通じ合ったはずの今でも、まだ・・・もがいているんです。』

「・・いいねぇ~、そういう時期が一番イイ時期だよ。まだ、じゃない。今からだよ。頑張って、もがけ!」



愛弟子の恋敵かもしれない俺への
医師、そして人生の先輩からのエール


『頑張って、もがけ!・・か。』



この時の俺は
伶菜の不安を少しでも楽にしてやりたい
そのために自分でできることを増やしたい
それが今の伶菜を大切にする手段なんだ

俺はその一心で
自分を取り巻いている状況
そして
伶菜を取り巻いている状況
それらに対して
充分に目を向けることができていなかった

俺に脅威、そして嫉妬という感情を植え付け始めた男の動向を
予測していなかったから・・・・



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